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2002/09/17: 日朝平壌宣言

 日本の小泉首相と北朝鮮の金正日総書記が会談したあれである。 北朝鮮に拉致された人の安否の確認、及び、今後の国交正常化交渉に 向けての基本合意がなされた。大体において良好な滑り出しと言える。

 拉致事件の結果はとても悲惨なものだった。4名生存、8名死亡と生存者は 少ない。年齢から考えれば、死亡者は処刑されたか、過酷な処置を受けて衰弱死 したに違いない。現時点では明らかにされてはいないが、拉致された人がそれぞれ どういう運命を辿っていたかはそのうち少しずつ解明されていくんだろうね。 ひとつ面白いネタができたということでめでたしめでたしと……

 拉致を端的に言えば、戦争状態にある北朝鮮の部隊が日本へ潜伏して民間人を 捕虜として連れさらった。日本での各種工作のために捕虜は使役された。 捕虜のうち何人かは抵抗したということで処刑され、刑罰を与えられたり、 投獄されたりする中、体力のない者は死んでいった。そして、4名しか残らなかった という感じなんだろう。今回の日本との交渉のために都合の悪い人物は新たに殺された のかもしれない。北朝鮮に協力的であったが、日本に帰国して暴露されると 都合の悪い深いところまで関わってしまった人物とか。

 国際法上での捕虜の扱いについては知らないけど、戦争状態の国で捕虜として 死んだというだけなので、北朝鮮が悪いとすぐには言えない。それは、日本の近くに 北朝鮮という戦争状態の国があるのに、のほほんと平和を享受している日本の多くの 国民がいけないのだ。捕虜を取り返すのであれば、国交がないからと手をこまねいて いるのではなく、軍事作戦を遂行するしかないのである。戦争状態の国とは正常な 交渉などありえないのだから。ただ、今の日本は軍事作戦を展開することがまったく できないので(日本近海を警戒するぐらい)、どうしようもない状況ではある。

 ただ、今回、北朝鮮が日本の友好国となると決意して、拉致作戦の犠牲者を明らかに したり、ミサイル開発を凍結したり、小型艇での日本への進入を停止すると表明した のは日本にとって幸運であったとしかいいようがない。日本は軍事活動をできないから、 北朝鮮が進んで戦争終結を宣言しないとどうしようもないからである。だから、 北朝鮮による拉致作戦の犠牲者が多かったからといって、北朝鮮の停戦交渉及び 国交正常化交渉を拒否することができなく、そういう日本の対応を弱腰として 非難することもできないのである。もし拒否するんであれば、再び戦争状態に戻る だけなのだから。

 それで、アメリカが登場して北朝鮮への軍事作戦を展開し、北朝鮮がかつての イラクのように全面降伏して、韓国に吸収されていくという展開の方がいいかも しれないが、中国の北朝鮮側での参戦、そして、泥沼化という最悪の形が待って いるかもしれない。

 正常化交渉はいかになるべきかというと、多くの日本人を北朝鮮に 送り出すことに尽きる。どれだけ日本人が北朝鮮に出かけていくかが、正常化交渉後の 北朝鮮との友好関係の構築の尺度になる。韓国人じゃなくて日本人がである。 ま、この辺はどう転ぶか分からないところだけど、金をたくさん出すから、 日本人も多く受け入れよと言わなければ、そして、実現しなければ、北朝鮮の 経済が持ち直したところで、はい、終わり、また、戦争状態ねと言われることに なるに違いない。北朝鮮の経済に多くの日本人が関わっていれば、「戦争状態= 日本人撤収=経済停滞」という関連が生じて、すぐに交戦状態には戻らない だろうから。

 日朝平壌宣言と同時にイラクの核査察の受け入れのニュースを新聞で目にした。 北朝鮮もイラクも9・11事件で猛り狂っているアメリカの標的にはなりたく ないらしい。北朝鮮はかなり前進したが、イラクはどこまで進むか面白いところ である。

 それにしても、4名生存、8名死亡の拉致事件の結末はかなり厳しいもの であった。恐らく外交筋だとそういう悲惨な状況であることがすでに分かっていて、 事務レベルですんなりいくもんではなかったのだろう。小泉首相が行かないと、 トップ会談の末、発表されるという厳粛な形ではないと収まりのつかない悲惨な 結末だったというわけ。そういう状況の矢面に立てる人物って小泉首相しか ありえないだろうなというところもある。他の首相はびびって逃げるよ。

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