テレビで経済について議論している番組を見る。NHK のやつは出演者間である種の同意がなされているのか、決して荒れない。不思議だ。さすが NHK って感心したりする。知識人、政治家等々の経済認識はこういった番組を見るたびに前進しているなと思うのだが、進み方が極めて遅いという気もする。
実体経済の向上、つまり、需要の創造が重要だという共通認識はあるようである。しかし、そこから具体的な事案に移ると狂う。何も思いつかないのか曖昧に終わらす人や実体経済の向上に繋がらないことにこじつけようとするやつらばっか。例えば、道路や港を作ってもしようがなく、老人介護や教育に金をつぎ込もうとか言っている人がいる。老人介護には確かに需要があるけど、介護を受けた老人はとくに生産的に何かを生むわけでもない。経済上は老人介護はブラックホールでしかない。介護により快適な生活を送れるようになった老人が社会・経済に何か積極的に働きかける役目を与えることができるようともう少しプラスアルファの計画をほのめかしてくれればと思うのだが、それに言及してくれない。教育も今の水準で十分過保護教育だと思うが(だから需要が大きいと言えるのだが)、生涯教育制度とそれが社会・経済にプラスになる何か方向性を与えてくればなとか思ったりする。
規制緩和はいいにしても、減税は結局高所得者の優遇にしか繋がらないことしかやりそうにない。消費税を10%以上にしようと思っているやつらばっかりだし。株式関連での減税というこれまた高所得者やら大企業向けのものでしかないことしか言わないし。減税するなら消費意欲を減退させる消費税を下げろとか言いたい。ま、5%のままでもいいし、それ以上上げないと確約が取れれば、下げなくても構わないけど。
株式市場をもっと魅力のあるものにしていくべきだという共通認識もある。馬鹿な話だ。株式こそは価値を否定されつつあるものだと言うのに。ま、一種の幻想だけど、幻想な割には価値が上がれば儲けものだから、株式を否定はしないけど、あまりそれに依存してはならないという認識をもって欲しいな。そうすれば、株式がない状態でもどうやれば経済の向上を目指せるかというもっと客観的な視野になって経済を見ることが可能となろう。でも、株式に目が離せないから株式うんぬんがすべてということになって、今後の経済的視野が狭くなってしまう。その辺の改善が見られるのは後どのくらい待てばいいのかじれったくも思う。
りそな銀行が公的資金要請したのだって、りそな銀行の努力が足りなかったというより、株価の下落が主要因。自己資本比率が低下してそれを補うために国から金をつぎ込んで自己資本比率を回復するといっても、ゼロ金利時代で扱える資金は前から豊富で量が変わるわけでもなく銀行業務の実態は変化がない。自己資本比率というある種の建前のためだけの公的資金というだけ。実質国有化してしまうとは言え、どの銀行も公的資金という最後の生き残り策があるので、銀行自体の信用不安はあるようでないもの。国有化で国から搾取されるわけでもなく、景気が良くなればすぐ無罪方面という形で非国有化の元の状態に戻ることだろう。なのに、りそな銀行の今回の件で信用不安がなんとかという話を聞くたびに馬鹿馬鹿しく思ってしまう。政府のバックアップがあるから日本の銀行はとにかく安全。銀行株が下がっているのは株式全体が下がっている一連の流れの一つに過ぎない。
株価低下=信用不安という論理もなんかおかしいと思っている。その根底には株価は高いもの信用すべきものという前提がある。しかし、株価は本当は信ずるに足らないものでしかない。株価による財の構築は幻想の手法だともっと理性をもって考えるべきでもあろう。ま、その幻想が形ある効果を出せればそれは儲けものだということは分かるのだけど、その幻想を経済に欠かさざるべきもととしてしまったばかりに、りそな銀行の自己資本比率割れを問題視するしかなくなる。6%であれ、8%であれ、10%以下の自己資本比率では銀行に取り付け騒ぎが起きたら対処できないのは変わらない。20%、30%あってもどうかなと思う。結局、高くない自己資本比率は取り付け騒ぎを回避するには足らないことには変わらないし、銀行の経営の健全性を計るにも動きのない数値でしかない自己資本比率では物差しにすらならない。自己資本比率の規制は低い自己資本比率で活発に融資活動を行って経済を活性化させていたかつての日本経済を抑えるための外人の策でしかなかったのに。
小泉内閣は経済政策を行っていないということを言っている人がいたけど、大局的に何もすることも必要のない時代に表立って経済政策をする必要はない。何もすることがないからデフレで厳しいのだけど、無理にはしゃいで財政を厳しくするのは状況判断が悪いとしか思えない。何かする必要のない時代に新しい何かを見つけ日本の方向性を見つけ行動するのを要求しているのだろうが、ま、常人じゃそれをやるのは無理だというところ。ま、それをできるのは誰もいないに違いない。できるのは気違いぐらいなもの。
ゼロ金利時代に企業が設備投資をしないとぼやいている人がいたけど、銀行がゼロ利子で企業に貸さないから設備投資をしないんだよってそれだけ。銀行の問題を遮蔽して経済の矛盾性を指摘しているという以前と変わらない発言には反吐が出る。
結局、とくに政治的方向性がなく緊縮財政をしている小泉内閣も、インフレターゲットの導入を否定し何かと行動を自重しゼロ金利で市場に経済の動向を丸投げしている日銀も、ゼロ金利で資金的には余裕だが不良債権と低下する株式の償却をまったくもって不利な今という時点で行ってひいひいいいながらも未来を見つめながら保身を行っている各銀行も、方々で宣伝・洗脳工作を行っていても株式に決して手を出さない賢い国民も、今は売りだと売りまくっている株式市場も、デフレで資金運用がとにかく難しい状況で悲嘆に暮れている保険会社も、それぞれの存在と今のありようはもっともだと思うのだ。もっともだけど、それが最善ではないというのは言うまでもない。