とにかく戦争について反対するのが正論に見える。戦争をするよりしない方がましなのは分かる。けど、そこには戦争を根っから否定するために多くの考察を放棄してしまっていることを分かっていない輩が多い。大抵、戦争反対を訴えている人を見ると阿呆だなと思ってしまう。
イラク、及び、周辺国の人々にとって戦争に反対するのは正当性を感じる。思考を放棄した態度であろうと、混乱と貧困と死という最悪の環境が待っているからである。しかし、もっと離れた、客観的な思考をできる人であるならば、戦争を否定するにも根拠が必要である。根拠を特に挙げられないからと言って、戦争を肯定するつもりはない。
アメリカが仕掛ける戦争を防ぐ一番いい方法は何か。それはすごく簡単である。国連で戦争反対の決議をすることではない。人の盾となることでもない。反戦デモをすることでもない。イラクに援軍を送って、アメリカに対抗する軍隊をイラク国内に駐留して、アメリカの行動を阻止する態度を取ればいいのである。フランスとドイツ、それに数カ国の軍隊がイラクに駐屯すればアメリカは攻撃はできなくなる。アメリカはいかに強く、フランスやドイツがアメリカと戦うには非力すぎるとは言え、イラク及びテロ支援国家と呼ばれる国以外を攻撃する正当性は存在しえず、アメリカがフランス、ドイツの軍隊を攻撃した時点で、世界的孤立を生む。そして、アメリカ国内においても、大統領は支持を失うだろう。
ただ、イラクがフランスやドイツなどの軍隊を国内に入れるかどうかは分からない。イラクが賢ければ、そして、駐留する国がイラク国内の政策について不介入を宣言するのであれば、イラクは妥協するであろう。私が言いたいのは、戦争を回避するには、国連で戦争反対を訴えたり、遠くから反戦を唱えるだけではダメだということである。アメリカは単独でもイラクを占領するだけの力を持っているのであり、戦争反対という遠吠えは馬の耳に念仏でしかない。しかし、少し危険を冒して、アメリカに対して胸を張った行動(それは言葉で反対を言うことではない)を取るだけで、戦争は回避できるのである。
しかし、そういう雰囲気はまったくなかった。戦争反対を多くの人が唱えてはいるが、結局、アメリカの頑強な行動に対し水を指しておけば、少しは利益があるだろうと考えているだけでしかない。それはまったくの無責任である。もっと有意義な行動をするのであれば、アメリカにはっきりした形で抵抗するか、アメリカと共に行動するしかないと思う。
国連でイラクの問題について実際の当事者になるでもなく、遠くから眺めながら、アメリカという権威に楯突くことでアイデンティティを獲得するか、世界規模の世論を味方につけるかしようとする輩の国を見ると、国連って何なんだろうと思ってしまう。まだ早いがイラク後の復興活動を国連中心でやろうとしている雰囲気がとても嫌な感じがする。国連は無責任の連中の塊であり、アメリカがイラクで苦労をしながらも大きな責任を背負って行動した成果を奪ってしまうというのは、さながらハイエナでしかない。無責任な連中が無責任にイラク後の活動をすることは、多くの矛盾を孕んだ力学で決定してしまうことで、良くない結果を生むかもしれない。イラク後はアメリカ主導でやるのが適当だと思うし、その中でアメリカが自己中心的な行動を取ったらそこで批判を開始すればいい話だ。
イラク北部にはクルド人勢力がある。イラク政府の弾圧を長年受けていて、今こそ独立だという機運らしい。でも、石油奪って利権を得てうまい汁を吸おうという傾向が高い。そういう行動自体はしごく正直であってあまり批判する気もないのだが、イラク後は石油の利権構造による矛盾した政治・経済的力学の排除を視野に入れて諸事がなされて欲しいなと私は思ってはいる。そういう意味で、イラク戦争後にクルド人による独立国家の樹立は好ましくないと思っている。クルド国家は石油によって国家の体面は取り繕うことができるだろうが、それ以上の独立した国としてのアイデンティティを感じない。ま、仮に石油がなくて貧しく独立するしかないといった状況であっても、いろいろ弾圧を受けつづけるよりはましという感じで独立するもんなのかもしれない。その辺は私はよくわからない。