2000/06/25: 2000年6月25日の総選挙
- 議席の動向
前回の衆議院総選挙と同じく大きな動きはなかったようです。
- 連立与党の議席
以前、自民党と連立政権を担った社会党が議席を大量に失ったのと同じように、公明党、保守党が議席数を
大幅に減らしました。連立を離脱した社民党が今回議席を回復したように、今後、公明党、保守党も連立を
離脱し従来通り、野党として選挙活動すればもとの議席を回復すると思われます。
一方、自民党は少し議席を失ったものの現状維持といったところです。公明党との選挙協力を
おこなったことで、一部の選挙区で議席を失う羽目になったという見方もあるようですが、公明党の組織票の
効果はかなりあったと思われます。公明党の協力がなければ、失う議席はもっと増えたでしょう。公明党は、
自民党との選挙協力が裏目に出ましたが、自民党についてはよかったと思うべきでしょう。そういう意味で、
自民党は恐ろしいと思います。以前の社会党もそうですが、連立した党の力を吸収してしまうというという
ことがです。
- 野党の議席
民主党が大幅に議席を伸ばしました。これは、連立に回った元野党公明党、保守党の失った議席を
奪っただけに過ぎないと思います。また、共産党の議席も奪いました。これは、反自民の旗印として、
民主党の存在がはっきりしたことと言えます。浮動票が、共産党などに流れなく、民主党に流れることが
はっきりした証拠でもあります。前身となった新進党は存在期間が短く、反自民としての旗印になり損ない
ましたが、民主党はもう少し長生きして欲しいところです。
共産党は議席を減らしました。これは、比例議員数が減ったのが主な原因なものの、民主党や連立離脱し復調した社民党、
選挙前に自民と手切れし、野党としての存在感を見せた自由党に票が流れてしまったことが大きく影響している
と思われます。前回の躍進の分を失っただけなので、共産党としては落ち度はないと思いますが、
それでも20近い議席を占める党として孤立して政治活動を行うのではなく、歩みよりをよりみせると、
今回流れた票が戻ってくる可能性もあるでしょう。
自由党は議席を増やしました。これは連立離脱が効をそうしたというところでしょう。つまり、民主党と共産党の票を
奪ったというところです。
社民党は復調というところです。
野党が自民から政権を奪うためには、今後、民主党、自由党、社民党の連携が必要と思われます。この3党が
合体すれば自民党の議席を奪う力をかなり持つと思います。しかし、野党というのは何かにかけて独立志向の
大きいものですから、それは無理というところなのかもしれません。自民党は、公明党と結んでまでも与党であることを
欲したのに対し、野党には自民党のそういう抜け目なさというか真剣さに欠けるところがあります。昔、大学の講義で、
自民党は政権を維持するために野党より革新的であるという話を聞きましたが、まさに、自民党は与党であるため
ならなんでもするという政党なんでしょう。ただ、政権を維持できることさえわかれば、自分は痛みを受けないよう
何にもしないという政党でもあります。
- 今回の選挙の一番の気がかり
自民と野党の勢力を見てみると、都市部で野党、とくに、民主党、農村部で自民党という図式がよく目立ちます。
ここで問題は、都市部で自民党の大物議員がかなり議席を失ったということです。これによって、今後、都市部の
議員が政権内で重要なポストを担う割合が減ってしまうのです。農村部の議員は安定した基盤を持ち、多くの
当選回数を持つ人が多いわけですが、そういう人は地元との利害に結びつきがちで、日本全体を見渡した
政策を行う割合が減るということです。また、首相をはじめ重要なポストを農村部の議員が占めていては、
今後の日本を占う上でもかなりの問題でしょう。また、都市部は野党議員ばかり選ぶわけですが、野党議員は
政権を担えないので、それで恩恵を受けることが少なくなるので、ここで、都市部、農村部の政治意識の差も
どんどん大きくなることでしょう。
- 総選挙の今後
はっきり言えることは、選挙制度の改革によって、自民党は政権を維持することができていることです。
中選挙区から小選挙区に、そして、比例代表の議員数が減ったことは、自民党にかなり有利です。
小選挙区制は、2大政党を目指したものでしたが、日本では2大政党を担うだけの、政治的な基盤が
ないので、これは単に現職有利、つまり、自民党有利な制度でしかありません。前回の選挙を含め、
今回の選挙も中選挙区制で行われていたとしたら、すでに、自民党は大幅に議席数を減らし、
野党となっていたことでしょうし、それによって、自民党は内部分裂を起こしていて、自民党自体が
すでになくなっていたかもしれません。自民党は自民党内の派閥が、一般の党に相当し、それで
連立しているだけなので、与党であるからこそ連立できているわけで、その理由がなくなれば、
ばらばらとなるのは必定なのです。
というわけで、小選挙区制のためか、大きな変化がおきにくいのです。また、有権者は、自民党以外の
政党に政権を持たせようという気もないので、今後十年近くは現状維持というところなのかもしれません。
新進党や民主党という野党の連合の党が出てきて、反自民として政権を奪取しようという方向性が確実なのが
救いなのですが、動きがのろいため、結果は出しにくいというところです。野党としてはくじけずにがんばって
もらいたいと思います。
- 今回の選挙
私は、神奈川6区の有権者です。小選挙区は池田氏に、比例代表は民主党に入れました。比例代表は、
共産党に入れてもよかったのですが、民主党の躍進を望んでいたのであえて民主党に入れました。
小選挙区は、連立与党を担った政党を除く志向で、自民、公明、社民、保守以外の議員がなるべく
選ばれるように入れました。投票した民主党の池田氏が難なく当選しましたが、年齢が60超えていることも
あり、もう少し若い候補に入れたかったのが心情です。そして、神奈川6区は、小選挙区で落選した、
自由党の土田氏、公明党の上田氏が比例代表議員として当選してしまったので、わけがわからないところです。
ま、私は、小選挙区で落選した人が比例選で当選することに疑問視するわけではありません。議員が 3人とも同じ
選挙区から出てしまったが、わけがわからないのです。
別な選挙区で注目すべきところは、神奈川17区です。民主党公認のツルネン氏は、自民の河野氏に大差をつけられて
落選しましたが、注目すべき人物だと思います。なにせ名前が面白いから。確か前の県議会議員選挙で、私は、
ツルネン氏に投票したのですがあえなく落選しています。今回の選挙で、自民の河野氏を破って当選とも
すれば大ニュースになったと思うのですが、残念です。
あと、個人的に気になったのは、東京1区の与謝野氏。昔、私は西新宿に住んでいたのと、その辺では、知名度が
高い人であるので、自民党候補だけど、当選すればいいなと毎回思っている人物なのです。しかし、都市部
での民主党の大躍進のとばっちりを受けて落選してしました。
- 今後の政治は
今回の選挙で変化はあまり見られなく、今後も同じ状況が続くであろうとおもいます。それで、自民党に
政治を期待するしか道はないのかなぁとかなり失望しています。自民党は、長年の与党生活のために、
利害にがんじがらめで、税金を何に使えばいいのかという意識が欠如しています。ま、野党も、税金の
無駄遣いは止めようと言っているだけですからあまり変わりがないのです。
借金地獄を案じさせるような発言が多いこのごろですが、不況だから、税金を大量投入するのは効果的
だと思います。ただ、税金を何に重点的に使うのかとか、どういうふうに使うの
かというのはよく考えなければいけません。自民党は、支持基盤にばらまくという形しか取れないです。
さて、昨今、IT革命と言われていて、
情報関連に投資するのが一番のように考えられていますが、これはちょっと間違っているのです。
情報関連への投資はあくまで、社会形態というか産業形態の基盤に対する投資でしかないのです。IT革命は、
その基盤の革命でしかないので、それ自体が金を生み出すわけではありません。IT革命でできあがった、
コンピュータ技術に裏づけされた新しい産業基盤の上に立つ産業に投資していく必要があります。しかし、
その産業が何かというのはまだ見つけられていないようです。それが見つけられ、軌道に乗ることで、
経済は革命に遭遇しますが、それを自民党はできるのでしょうか。諸外国が見つけられれば、それを
真似することでできるかもしれませんけど、その力量を自民党で試さなければいけないというところで、
私は、かなり、失望感に浸ってしまうのです。
- 投票率
実は、投票率=政府、議会の存在する理由です。投票率が低いということは、政治に対する関心が低い
というわけではなくて、政府、議会なんかいらないと思っている人が多いということを意味するのです。
今回の投票率は60%ですが、40%もの人が、議員なんていない方がいい、金の無駄だと思っているという
ことには驚きです。民主主義で多数決は必要悪であるものの真理であると思われているようですが間違い
です。民主主義とは、多くの人が集団を作ること、そして、その集団を運営するには多数決がよく、
多数決で決められたことを守っていかないと集団が集団として機能しないということなのです。少数意見を
無視してはいけないというのは、集団が分裂してしまうからです。そして、多数決が存在するのは、集団が
多数決で運営されるためです。投票に行かなかった人は、多数決という集団運営への参加を行わなかった
ことであり、それは、集団、つまり、日本からの離脱を意味します。多数決という集団の運営を無視したのです。
しかし、離脱はするものの、仮に集団に所属して、そして、集団に所属する利益を得ているのです。
そういう都合のいい人は、日本にいて欲しいのか悪いのかは不明です。
というわけで、低い投票率は、政治不信よりも、むしろ、より小さな、より金を使わない、より制限された政府
というものが望まれていることを意味するのです。それは、国会予算のうち、無投票率に相当する40%は
国民に返還せよ、使う信任もないということなわけです。政治家や政府関係者は、政府や議員がいるのは
当然と思っているのでしょうが、投票率が低いことは国民から政治に対する口出しが少なく、自分たちで
勝手にやってよいということを含んでしまっていがちで、ここに困ったことが生じるのです。
- 最後に
以上、私の 独断と偏見による「2000年6月25日の衆議院総選挙に思うこと」でした。